【審決例】商標の類否(不服2021-7656)[SYUNSOKU/瞬速事件]

判旨

<外観>本願商標と引用商標の外観を比較すると、両者の全体の構成は上記(略)のとおりであり、文字種及び文字数が明らかに相違するものであるから、両者は、外観上、判然と区別できるものである。

<称呼>本願商標と引用商標とは、「シュンソク」の称呼を共通にするものである。

<観念>本願商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は、「まばたくくらい速い」程度の漠然とした意味合いを想起させるものであるから、両者は、観念上、相紛れるおそれはないものである。

<結論>本願商標と引用商標とは、称呼において共通するとしても、外観において判然と区別できるものであり、観念において相紛れるおそれはないものであるから、外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

雑感

近年増加傾向にある、商標の類否判断に係る外観・称呼・観念のいわゆる「3点観察」のうち、外観を重視した審決である。

また、「シュンソク」の称呼を有する商標を巡る審決は多数存在するが、その殆どは補正や当事者間の分割移転により解決しており、本件は商標の類否を正面から争った希少な事例である。

引用商標(先願)の権利者側から見た場合、たとえ「瞬速」で登録できたとしても、後発的に同音である「SYUNSOKU」の併存登録を許すこととなる。登録商標の希釈化のおそれや禁止権の範囲の狭小化を防止するためには、漢字表記のみならず、カタカナ表記やローマ字表記での登録も検討する必要があり、コスト面で過度な負担が生じると言えよう。