【審決例】商標の類否(異議2021-900267)[zoomrooms事件]

判旨

<外観>構成態様、構成文字数が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。

<称呼>両者は後半部に「ルームズ」の音の有無という明らかな差異を有するから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。

<観念>本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「(画角を連続的に変えることの意である)ズーム」の観念を生じるものであるから、相紛れるおそれのないものである。

<結論>本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、非類似の商標というべきものである。

雑感

本件の異議申立人である株式会社ズーム(東京都千代田区)は、昨年9月17日にNEC ネッツエスアイ株式会社(東京都文京区)を相手に、 同11月30日にZOOM Video Communications, Inc.(アメリカ合衆国)を相手に、それぞれ商標権侵害に基づく差止等請求訴訟を東京地方裁判所に提起したとして話題となった。本件は昨年7月9日に申立てがなされた事件のため、2件の侵害訴訟提起日よりも前に当たることになる。

本件において、株式会社ズームは自社の2件の商標権に、株式会社ズームリパブリック(東京都品川区)、株式会社トンボ鉛筆(東京都北区)及びレイショナル インテレクチュアル ホールディングス リミテッド(イギリス)の商標権を加えた計3件の商標権に係る商標を引用商標として異議申立てを行った。

しかしながら、本件商標との類否判断において、いずれの引用商標も「非類似」とされた。外観・称呼・観念を総合的に見て妥当な判断と言わざるを得ない。今後無効審判を請求する可能性もあるが、異議の対象とする商標が「zoomrooms」では無理があったのではないかと考える。

それにしても、株式会社ズームは侵害訴訟のみならず、このように異議申立てまで行って相手方商標の排除に動いており、その姿勢は極めて一貫している。侵害訴訟に関しては、和解金での解決を排除するとの理由により損害賠償を請求しておらず、そうであれば判決が出される可能性が高いため、裁判の動向も注視していきたい。