【審決例】不服2021-9487(商標の類否)[Walky/WALKI事件]

判旨

<外観>本願商標と引用商標との類否を検討するに、両者は、外観については、5文字目において「y」と「I」の欧文字が相違し、かつ、文字構成が大文字及び小文字と、大文字のみといった差異を有するものであって、これらの差異が、5文字という比較的短い文字構成である両者においては、外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は少なくなく、両者を隔離的に観察しても、外観上、明確に区別できるものである。

<称呼>本願商標から生じる「ウォーキー」の称呼と、引用商標から生じる「ワルキ」又は「ウォーキ」の称呼については、「ウォーキー」と「ワルキ」の称呼とを比較すると、その構成音及び構成音数に明らかな差異を有するものであるから、明瞭に聴別できるものであり、また、「ウォーキー」と「ウォーキ」の称呼とを比較すると、異なるところは語尾における長音の有無のみであるから、両者をそれぞれ一連に称呼するときには、音調、音感が近似し、互いに相紛れるおそれがあるものと判断するのが相当である。

<観念>本願商標と引用商標とは、共に特定の観念を有しないものであるから、比較することができないものである。

<まとめ>本願商標と引用商標とは、観念については比較できないものであるとしても、外観については明確に区別でき、称呼については、複数の称呼のうち1つの称呼が相紛れるおそれがあるとしても、その他の称呼は明瞭に聴別できるものであるから、これらが取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であるというのが相当である。

雑感

本願商標と引用商標は、ともに辞書等に掲載のない語であり、指定商品及び指定役務の分野において特定の意味合いを有する語として知られているとの事情も見い出せないから、一種の造語として看取されるものと認定された点において共通する。

また、読み方について、一般的には特定の意味合いを想起させない欧文字からなる商標を称呼するときは、我が国において広く親しまれている英語風又はローマ字風の読み方に倣って称呼されるとみるのが自然であると認定された点においても共通する。

その上で、本願商標は「ウォーキー」 の称呼が生じ、引用商標は「ワルキ」又は「ウォーキ」の称呼が生じるとされた上で、いずれも特定の観念を生じないものと認定された。

問題は外観と称呼の比較である。

外観に関しては語尾の「y」と「I」が異なるのみという僅かな相違点であるにも関わらず、「5文字という比較的短い文字構成」であることを理由に「外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は少なくな」いとし、「明確に区別できる」との判断を行った。また、称呼に関しては、「複数の称呼のうち1つの称呼が相紛れるおそれがある」とした上で、「その他の称呼は明瞭に聴別できる」との判断を行った。その結果、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であるとの結論を導いている。

外観に関しては何文字以内であれば短い文字構成と言えるのか必ずしも明確ではなく、複数の称呼が生じる事案では1つの称呼が相紛れるおそれがあっても他の称呼が明瞭に聴別できれば良いのか、商標の類否判断を分ける重要なポイントとなるだけに一貫した判断が求められよう。