【審決例】不服2019-000060(3条1項柱書ほか)[MIRAI事件]

【商標スクエア】3月2日、上田育弘氏による商標登録出願(出願手数料納付分)について、3条1項柱書等の該当性を争点する拒絶査定不服審判の審決がなされた。概略は以下のとおりである。

出願内容

  • 商標「MIRAI」(標準文字)
  • 指定商品:第12類「航空機,航空機の部品及び附属品,鉄道車両,鉄道車両の部品及び附属品」
  • 請求人:上田育弘(大阪府高槻市)

判旨

▼商標法3条1項柱書について

請求人が、本件商標を自己の業務に係る指定商品について現に使用をしていなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえる。

➡本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。

▼商標法4条1項7号について

商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。また、本願商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが 商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると判断するべき事情はない。

➡本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

▼商標法4条1項15号について

本願商標は、請求人がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ自動車株式会社あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。

➡本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

雑感

結論的には、争点3において4条1項15号(出所混同)に該当することを理由に請求成立(拒絶審決)となったものの、争点1や争点2の判断は非常に懸念される。

この手の出願を3条1項柱書や4条1項7号で処理できないことを特許庁自身が認めた形となり、他の拒絶理由に該当しない場合はすんなりと登録が認められることもあり得るためである。

悪意の商標出願(Bad faith)に対する個別規定の創設が待たれるところである。