知財高判令和4年2月9日 審決取消請求事件(令和3年(行ケ)第10076号)
原告(商標権者)は著名な発明家で、被告も著名な弁理士という対立構造の中、商標法50条にいう「使用」が争点の1つとなった判決がなされた。いわゆる商標的使用の「必要説」と「不要説」の争いである。結果は・・・
商標法上,商標の本質的機能は,自他商品又は役務の識別機能にあると解するのが相当であるから(同法3条参照),同法50条にいう「登録商標の使用」というためには,当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し,自他商品又は役務を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されることを要すると解するのが相当である。
この点に関し,原告は,上記「登録商標の使用」といえるためには,当該登録商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足りる旨主張するが,上記のとおりの商標の本質的機能に照らし,採用することができない。
上記のとおり「必要説」が採用された。
数年前までは、知財高裁の特定の合議体において不要説が支持される傾向にあったが今後は必要説に収斂されるのか。引き続き、裁判例の動向を注視していきたい。
【参考】不要説
▼高部眞規子『実務詳説 商標関係訴訟』金融財政事情研究会(2015年)270頁
「商標の不使用を事由とする商標登録取消しの制度の存在理由、すなわち全く使用されていないような登録商標は、第三者の商標選択の余地を狭めるから、排他的な権利を与えておくべきでないという理由に鑑みても、商標法50条所定の「登録商標の使用」は、商標がその指定商品について何らかの態様で使用されていれば十分であって、識別標識としての使用(すなわち、商品の彼此識別など商標の本質的機能を果たす態様の使用)に限定しなければならない理由は、考えられない。」
▼飯村敏明「商標関係訴訟〜商標的使用等の論点を中心にして〜」パテント65巻11号(2012年)112頁
「裁判例を分析する限り、「商標的使用」については、登録商標の不使用取消審判における「使用」の有無を判断する場面では、侵害訴訟よりも、判断基準が緩やかです。そして、登録商標の不使用取消審判における「使用」の判断基準を緩やかにすることには、十分な合理性があると考えています。」